学校で行われていること

学校精神保健において、リストカットなどの自傷行為は大きな問題です。身近に生徒の心身の健康を観察し、相談を受けるのは担任など学校関係者であり、とりわけ養護教諭に精神保健問題に関する助言や調整を求められています。いじめや自殺の問題につながる精神保健問題の対応に関して養護教諭のニーズや課題に関する調査は行われているものの、急激に変化している学校現場においてその課題は変化していくものです。養護教諭が行うリストカットなどの自傷行為などの非自殺的な自傷行為に対する効果的対応や課題をインタビューによって明らかにした上で支援体制の構築にやくだてたいと考えています

学校の支援体制

「学校の支援体制」には6つのカテゴリー、〈支援する教員のサポート〉〈チームでの効果的な支援体制の構築〉〈コーディネート力を発揮する〉〈組織の情報共有体制〉〈社会に開かれた学校を作る〉〈生徒全体へのノーマライゼーション>と15のサブカテゴリー(以後【 】)が抽出された。
支援する教員のサポート〉では、【支援する教員の安心感を保証する】【スクールカウンセラーにつなぐ】【管理者のバックアップ体制】として、支援する教諭にとってはカウンセラーやソーシャルワーカーといった専門職にメンタルヘルスに関する支援を相談できることや管理者に相談できることによって困った状況を解決することができていた。また、発達障害などの専門多面的な情報を得ることや他職種から「大丈夫」といわれることによって支援する教員の安心感につながっていた。〈チーム支援体制の構築〉では、【支援する教員の相談体制作り】【チームの中の役割分担を調整】【タイムリーな対応体制】として、生徒だけでなく支援をする教諭を支えることが長い目で見て今後の生徒のためにも必要であり、養護教諭らは、まず支援する担任などの教諭が相談できるシステムを知る、相談してもよいと感じることができるための工夫としていろいろなところに自ら出向いくことを行っていた。そして、支援の際には、教員側のチームをどう作るかという体制について考えることが大切であり、アプローチの方法によってどこまで誰を呼ぶのかということを考えていた。〈コーディネート力を発揮する〉では、【見立てる力をつける】【できないことを見極めて他者に依頼する】として、支援者と生徒のマッチングを見ることや、その相談に関してクラブの顧問や管理者などどのメンバーがよいかを見立てていた。その中では、生徒のメンタルヘルスについてのアセスメントを行い、自分ができる範囲を見極めて、できること以外を校内の資源や外部に依頼をしながら支援体制を構築していた。〈組織の情報共有体制〉では、【生徒の様子を実際に見て情報共有】【学校全体で共有する場を持つ】として学校内において身体的課題と同様に精神保健に関する生徒の課題が共有されており、生徒の特性に応じた支援の共有がされていた。〈社会に開かれた学校を作る〉では【地域に開かれた学校を作る】【組織間の切れ目ない支援体制の構築】【社会の変化に対応する指導】として、学校でできることとできないことを見極めながら、外部の福祉や医療の手を借りながら支援体制を構築していた。そうすることで、家庭環境を理解することや発達の問題への対応が可能となっていた。これは、高校3年間という限られた期間がある学校の支援を卒業後の生活まで見据えて継続的な支援を行うことにもつながっていた。〈生徒全体のノーマライゼーション>では【相談に来ない生徒に対するジレンマ】【生徒へのメンタルヘルス教育】として、養護教諭らは保健室に来ている生徒への支援が中心であり、誰にも言わずにひっそりと苦しんでいる生徒に対して何か手立てがないかとジレンマを感じていた。現在の教育内容ではまだ十分でないメンタルヘルスについての講義を外部のカウンセラーなどに依頼してストレス対処の話を生徒向けにするといった取り組みがされていた。