自分を傷つけることをやめられない生徒へ

 

 

実際に工夫されていた対応

「生徒への対応方法」には〈生徒の気持ちに寄り添う〉〈関係構築の支援〉〈対処行動を広げる〉〈人としての成長を尊重する〉〈学校全体で対応する〉〈地域と連携しながら支える〉〈家族をとりまくシステムを整える〉といった7つのカテゴリーと18のサブカテゴリーが抽出された。 〈生徒の気持ちに寄り添う〉では、【自傷行為をせざるを得なかった気持ちを受け止める 】【生活全体の苦悩を受け止める】として、自傷行為をしなくては生きていけない状況、なんとかバランスを本人なりにとっていることに理解を示しながら、本人の抱える苦悩を受け止め、自傷行為に注目するのではなく生徒の全体を理解しながら対応していた。〈関係構築の支援〉では、【関係を継続できるための声掛け】【日常の中で何気ない声掛けを重ねる】【受け手の感情を率直に伝える】として、自傷行為やメンタルヘルスについての直接的な話ではなく、日常の中で何気ないことでも声を掛けることや、生徒に対して、養護教諭らが生徒のことを大切に思っているというメッセージをストレートに伝えていた。〈対処行動を広げる〉では、【本人が過去にできていた対処を認める】【自傷の代わりにできそうな対処方法を問いかける】【生活スタイルの助言】では、自己否定感が強い生徒が多いため、生徒のちょっと頑張っていることについて、頑張りを認める声掛けを行っていた。声掛けによって生徒自身が自傷行為も自分なりの一つの対処であったこと、自分のできていることについて認めることができるように、そして自傷行為のきっかけを問いかけながら、そのサインがある時にはどうしていくのか具体的な方法を一緒に考えていた。〈人としての成長を尊重する〉では、【本人の健康的部分を尊重する】【休むことを保証する】【生徒との距離を保つ】【成長を待ち見守る】として、生徒は辛さや不安を訴えながらも、一方では何かをしたいという目標や夢があることを養護教諭らは把握をし、そのためには本人自身が目標に向かって具体的な努力をしていけるように支援しながら、ゆっくりと成長を見守る姿勢を大切にしていた。〈生徒に合わせて柔軟に対応する〉では、【心理的に配慮した柔軟な指導体制】【チームの多様性を活用した支援】として校則だけの基準ではなく、一律した指導よりも本人なりのとった行動の意味を考えて生徒の安全感が大切にされていた。〈地域と連携しながら支える〉では、【関係機関と連携する】【医療機関との生活情報の共有】として、メンタルヘルスの問題だけでなく、身体的な健康面や生徒をとりまく過程などの生活面も含めて医療機関や地域のケースワーカーとも連携しながら支援を行っていた。〈家族をとりまくシステムを整える〉では、【家族の情報を整理する】【本人と家族の関係の調整】として、家族も生徒も否定することなくアセスメントし支援を行えていた。